Last Updated 2009.10.18

保存番号521番

【メーカー】株式会社庭園空間研究所
【施工年】2009年
【記録した場所】福岡県久留米市 高齢者複合施設K館
【記録した人】株式会社庭園空間研究所様
【種別コンクリート製〜通常型、滑降部2本、大小併設、築山に設置


製作元である、庭園空間研究所の上田様からのメールで、この滑り台の事を知った。

施工年は2009年10月と、出来たてホヤホヤである。誰もが自由に入ることは出来ない場所の物件である。つまり、当保存館の収録対象からは原則として外れていると言って良い。
にもかかわらず敢えてここに加えるのは、もちろん、この物件が「人研ぎ」だからである。他に理由は必要ありませんが何か?

ご存知の方も多いと思うが、「人研ぎ」(人造石研ぎ出し仕上げ)を施されたコンクリート滑り台は、現在殆ど製造されない。
製造はおろか、修繕も満足にされぬまま撤去され、年々数を減らしているというのが現状である。
かつては玄関や風呂場・流しなど、いたるところで目にする事ができた人研ぎ仕上げ自体、新規で施工される事が少なくなっているのだ。
そんな中、人研ぎ台の新作とあっては、取り扱わないわけにはいかない。

本物件の人研ぎ台としての特徴は、なんといっても「今風なデザイン」と「カラフルな塗装」となる。そして、一言でこの物件を例えるなら、「新しいのに懐かしい」につきる。
最近良くみかける、木や樹脂製ようなデザインがコンクリート製滑り台に施されているのが「人研ぎ台」としてはまず珍しい。そのくせ、梯子にはあの「タコの山」でもおなじみの、「かすがい」のような形のステップが用いられておりニヤリとさせられる。
滑り面は、寒水石を種石とした人研ぎ処理を見せるものの、それ以外の箇所には鮮やかな塗装が施されている。
個人的には全面人研ぎ処理が施され、石と色粉によって表面が淡く色づいた表情が人研ぎ台の魅力の一つだと思っている。しかし、未修繕で見栄えを損ねた物件や・塗装で痛みをごまかした既存の物件が多い事を考えると、これが現在における現実的な妥協点なのかもしれない。

工期や人件費等の製作コスト、技術を持つ左官さんの減少、維持コスト等、人研ぎ滑り台を新規に制作・維持していく為には色々と課題があるのだと思う。 しかし、人研ぎが過去の遺物ではないという実例がここにある。

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