「ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND」(12/10)
U2 2000
T0P/KINKYO / BACKNUMBERS /


好きなバンドをひとつだけあげろといわれると、これを読んでいるあなたは迷うだろうか。泣いても笑ってもひとつだけである。無人島に行ったときに一枚だけ持っていくCDを選べというのともちょっと違う。バンドでなくてはならない。もちろん、今、またはずっと長い間特定のバンドに肩入れをしている人ならばそれは容易なことなのだろうが。ちょっと考えると、特にこのサイトをはじめてからというもの、努めて色々な音楽に触れて、その結果裾野が広がりすぎちゃってちょっとどうしたらいいか分からなくなっている僕にとっても、この質問はとても難しいものだと思う。いや、正確に言えば難しいものだった。このU2のアルバムを聴くまでは、だ。

そういや、やっぱり俺はU2が一番好きだったんだなあ、と思い出させてくれた。僕はそんなに由緒正しい、来日公演にせっせと通うようなファンではない。日常生活でもそんなに彼らの音楽を流しっぱなしにしているわけでもないし。高校の頃、アメリカにホームステイしていたときに、そこの僕と年が大して変わらない高校生の男の子が、モトリー・クルーとU2にはまりまくっていて、何枚かCDをお土産に買って帰ってきて以来である。その時のCDは「ヨシュア・トゥリー」と「アクトン・ベイビー」だった。名作の誉れ高い前者以上に、より現代的な音に仕上がっていた後者を僕は繰り返し聴いた。

彼らの音楽のどこに魅力を感じるか。人それぞれ好き好きだとは思うけれども、僕にとっては彼らの音楽はいわゆるロックとして映ってこない。ロックにあるグルーブとか揺れとか、そういうものではないのだ。もっと即物的に魅力を感じる。テンポの速い中でゆったりとしたギターのアルペジオとか、ボノのヴォーカルのシワガレ具合や意図しないヴィブラートとかである。どこか底のほうから湧き上がってくるように紡ぎだされる音、それがU2の魅力だと、僕は感じている。楽器の音は良く聴こえるけれども、しかしアナログ的かといえば必ずしもそうではない。

僕をその世界へと導いた「アクトン・ベイビー」以後、「ZOOROPA」「POP」とU2はテクノロジーと対峙し、それまでのスタンスから一気にロケットに火をつけてさまざまな「未来」へと飛び立っていく試みを続けていた。もちろん、それらの作品についても、それまで知らないU2を見せてくれたという意味では珠玉のディスクたちではあるが、それはしかしU2がバンドであり、僕の一番大好きなバンドであると言う事実を常に確認させてくれるには至らなかった。

今年出たこの「ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND」は、U2というバンドの、僕の中でのポジションを思い出させてくれた。それはもう、一曲目の「Beautiful Day」から強い衝撃と共に起こった。そしてその勢いを持続させたまま、僕は懐古でもなく、紛れも無い自然すぎるU2の姿を全曲の音の渦の中で感じることが出来た。そのメロディアスさ、そしてボノのヴォーカルとバックの音、そしてエフェクトのマッチング、こんなにU2好きだったんだ俺は、と思わされた。未来を探索するため、POPな旅に出たU2は、さらに自然さを増しつつ今一度もともとの場所に帰ってきた。そしてこれから、このあとどこに行くのか。このアルバムに夢中になりながらも、彼らの新たな旅の行方にも興味をそそられる。今年の数あるオリジナル・アルバムの中でも、これは出色の出来だ。前2作で遠ざかっていたリスナーには、ぜひとも聴いてみることをお勧めする。また、U2に帰ってきたくなる。



ぶんせきは
KENTARO