「WHY」(4/18)
平井堅 2000
T0P/KINKYO
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ここに来て平井堅の株は急上昇しているようだ。男性のひとりアーティストでヒットするなんて、とんとご無沙汰、結局男なんて群れないと何もできないのよね、やっぱりオンナにゃかなわないのよね、などと見当違いの嘆きがあちらこちらから聞こえるほどだった状況に、突如現れたのである。
平井堅は、ベテランでこそ無いものの、それなりのキャリアを積んでいるアーティストだ。今年でデビュー5年目になるという。彼がデビューしたときの事を筆者はけっこう覚えている。新進の「歌えるアーティスト」として(コレは事務所orレコード会社の売り文句のようです)相当期待されていたようだ。ジャンルや毛色、はたまた顔の濃さは違えど、ヴォーカリスト=W中西(圭三&保志)ラインに無理矢理トレースさせようとしていたフシも見受けられた。なんにしろ「期待の新人アーティスト!!」的な雑誌の一記事に、良く名を連ねていた。ところがこれまでは、いってみればあまりパッとしなかった。
果たせるかな平井堅は、5年を経て前作「楽園」にてはじめてのヒットを飾った。確かに、歌唱力はある。声も魅力的だ。曲もカラオケで歌うと明らかに盛り下がりそうだが、もう「カラオケで歌えること」が必ずしもヒットの方程式ではないので、関係ない。筆者にとっては「楽園」をへたくそに唄っているのを聴くほうが、みんなでおててつないで19やらゆずやらで盛り上がっているのを聴くよりはよっぽどWELCOMEなのだ。宗教的匂いも、押しつけがましさもない。ともあれ、彼は「楽園」で検索エンジン「Goo」の「注目検索キーワード」に名を連ねるほどにブレイクを果たした。オトナの匂いほのかに漂う佳曲である。1年8か月というブランクを経て、デビュー当初の「ヴォーカリスト」を謳っていた彼から比べると格段に「オトコ」の部分が進化して、声を生かすサウンドに出会ってと彼なりの音楽的発展が花開いたのではないかと思う。非常にめでたい。
その昔から、シングルが1枚ヒットすると、その次は難しいとされる。「一発屋」の危険もはらんでいるからだ。冒険するもの、慎重にいくもの、そのどちらにもリスクがあり、メリットがある。それを勘案しての事だとは思うが、1枚目の路線をはずさずに、慎重にいくケースが多いような気がする。だいぶ前には、楽曲だけでなく、タイトルにまで前作の路線を引き継いで、いや引き継ぎすぎてしまう例が良くあった。庄野真代(たまに「ヒッパレ」に出てくるおばさんだ)の大ヒット曲「飛んでイスタンブール」の後のシングルは「モンテカルロで乾杯」であった。恥ずかしいまでの引き継ぎようである。ヒロシ&キーボーは「三年目の浮気」のあと「五年目の破局」とやってコケた。
さて、次作の「Why」である。
イントロだけ聴いて、これは「慎重に」いったモノである事は音速なみにすばやく理解できた。厳しくいってしまえば「楽園」風のシングルをもう一曲作ってみました、という感じである。「楽園」の平井堅を気に入った人には非常に受け入れやすいものではあるが、平井堅自体に興味のある人間にとってはいささか退屈なものとなってしまっている。洒落じゃなくこの歌そのものに「Why?」という感じなのである。しかし、これが先に書いた「メリット」と「デメリット」なのだ。ビジネスを成功させる上で、こういう戦略を取ってきたということなのだろう。そしてその戦略は果たせるかな成功をおさめつつある。
平井堅を長い間支えてきたファンのサイトなどをのぞくと、この「楽園」風への彼の変化に戸惑っている方も多いようである。平井堅自身はどうなのだろうか。推測の域を出ないが、やはり「楽園」風への転身も、そしてこの戦略的な「Why」のリリースにも、もっというとこのブレイクという事実にも多少なりとも戸惑っているのではないかと思う。「Why」という曲の向こう側には、そうした平井のとまどいと喜びが複雑に混じり合った表情が見える気がする。
ぶんせきは
KENTARO